いかにして問題をとくか

理系科目、特に数学において、「初見の問題をいかにとくか」というのは試験対策としてかなりのウェイトを占める重要テーマである。講師としても、力量が問われるテーマである。ただ解法の解説をするだけなら、どれほど難しい東大の難問だろうと、数学をかじっている人間なら誰でもできる。誰かが作った解法の理解ができる人間なら誰でも解説できるということだ。しかし、問題の読み方から始まってどう解法を選択して解いてゆくのか、つまり初めてその問題と対峙してからどういう過程をたどって解答まで行き着くかを説明するのは、解法の理解だけではできない。そもそも解説者が自力でその難問を本当に解ける必要がある。その上で、自分がどういう思考回路で解いたのかを分解してわかりやすく説明してゆくことになる。だから、解答ありきで授業するレベルの講師をハイレベル向けの指導には当てられない。全ては適材適所である。逆に、解答ありきでしか授業ができない講師でも、とんでもなく初歩でつまづいている生徒のフォローがすごくうまかったりもする。だから、学力と講師の実力が比例するのではなくて、あくまでも適性という話になる。

ちょっと、話がずれてしまった。いかにして問題をとくかというのが今回のテーマなのだが、まずは、以下に公開されたノートの写真を見て欲しい。これは、まだ幼い西村青年が解法暗記からどうやって脱却して難問を解くのか試行錯誤の末に作り上げたノートの抜粋である。昔書いたものだし、情報としては大したことは書いていない。別にもったいつけるようなものでもないが、まあ見て欲しい。

いかにして問題をとくか 1 いかにして問題をとくか 2 いかにして問題をとくか 3 いかにして問題をとくか 4

若かりし西村青年は、解法暗記を終えた後、このノート(実物はもうちょっとページ数がある)を完成させてから、受験レベルで解けない問題はほぼなくなったらしい。

「受験数学は手続きだ」と僕はいつも言うのだが、それはなかなか伝わらない。しかし、このように思考過程を網羅して事前に準備しておけば、才能がなくともかなりの難問までその場で解けるようになる。そう、才能ではなく、手続きにおいて処理が済んでしまうのだ。

僕は、幸か不幸か受験生時代にこれを的確に教えてくれる師に出会わなかったため自分でノートを作って、自分で道を切り開いた。だが、実はもう遥か数十年前にこの問題に真っ向から取り組んだ先達がいる。ポーヤ・ジェルジ(英名はジョージ・ポリア)なる数学者がその半生をヒューリスティクス(わからなければグーグル先生に聞いて)に費やして著した書籍が何冊かあり、その中に「いかにして問題をとくか(How to Solve It)」というとんでもなくストレートで骨太なタイトルのものがある。表紙を開いた見返し部分に書いてあるまとめを載せてみる。

いかにして問題をとくか 5

このまとめがまあ本体みたいなもので、それに200ページ以上解説がくっついているわけだ。「え、こんな大事なまとめを載せちゃって良いの」ということになるが、もしかしたら怒られるのかもしれないが(怒られたら全力で謝る)、しかし、実効値としてこのまとめだけが公開されて誰かの役に立つかというと、まず役に立たない。大体においてこういう著者が苦労したまとめというのは、読者にはすぐに理解できない。当たり前だ。著者がとんでもなく苦労してまとめ上げたものなのだから、そんな簡単に理解できるわけがない。だから、僕も「いかにして問題をとくか」については、本当にベースとなる注意点だけは絶対意識するように指導して、あとは生徒それぞれが「苦労して」まとめることを勧めている。どうしてもというのであれば、まとめを全部あげても構わないし、過去まとめを全部配ったこともあるが、結果誰も利用できなかった。初見の問題をどうやってとくかというのは、それだけ大変な訓練が要る作業なのだ。

とは言え、多少なりとも具体的なヒントになりそうな題材はこれからちょくちょく提示してゆければとは思っている。また、ポリアの著作に興味があれば読んでみても良いかもしれない。ただ、即効性はない上に実践に移すにはかなりのモチベーションが要るので、数学大好きという人以外には薦めない。「数学大嫌い?」という人は、絶対に読まないで。たぶんもっと数学が嫌いになる。そういう人は僕に会いに来れば良い。数学が好きになるという保証はしないが解けるようにはできる。